環境関連法:買って、使って、捨てるまで

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環境関連法:買って、使って、捨てるまで

前回は「産業機器とPL法」で、機械を動かす決まりと、売った製品で事故が起きたときの責任を見ました。

今回は環境関連法です。 環境の法律というと工場の話に聞こえますが、パソコンやサーバをそろえて、使って、捨てるという流れに、そのまま効いてきます。

図1 取得・使用・廃棄で、効いてくる法律が変わります

図1:取得・使用・廃棄で、効いてくる法律が変わります。

環境関連法という名前の法律は、1本もありません。 目的の近い法律をまとめて呼んでいるだけです。 だから丸暗記ではなく、場面で分けるのが早い。 取得する、使う、捨てる。 この3つで仕分けてください。

まず結論:この章の用語

用語意味
廃棄物処理法廃棄物を、誰にどう渡して処理するかを決めた法律
産業廃棄物事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法令で定める種類のもの
排出事業者責任廃棄物を出した事業者が、適正に処理されるところまで負う責任
マニフェスト産業廃棄物管理票。渡した先の処理を最後まで確かめる票
家電リサイクル法エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機が対象
小型家電リサイクル法パソコンや携帯電話など、使用済みの小型電子機器等が対象
資源有効利用促進法3Rを進める法律。パソコンのメーカー回収もここが根拠
省エネ法エネルギーの使い方を報告させ、改善を促す法律
GX推進法脱炭素へ移るための、お金と仕組みを定めた法律
GX脱炭素電源法電気の作り方の側を整えるため、電気事業法などを改正した法律

この章のゴール
出てきた言葉が、取得・使用・廃棄のどの場面の話かを言い当てられることです。

1. ものの一生に沿って、法律が並んでいる

図2 減らす、使い回す、資源に戻す。この順で考えます

図2:減らす、使い回す、資源に戻す。この順で考えます。

先に全体の並びを見ます。 ものは資源からつくられ、買われて使われ、いつか捨てられ、うまくいけばまた資源に戻ります。

扱いには順番があります。 上から順に、発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、熱回収、適正処分。 法律もこの並びに沿っています。

リサイクルが最上位ではない、というのがつまずきどころです。 資源に戻すにも、運んで、砕いて、また作る手間がかかります。 サーバを1年長く回す判断は、どのリサイクルよりも上の段の話です。

2. 捨てるときの本体は廃棄物処理法

図3 事業から出たごみが、そのまま産業廃棄物になるとは限りません

図3:事業から出たごみが、そのまま産業廃棄物になるとは限りません。

捨てる場面の本体が廃棄物処理法です。 まずやるのは、一般廃棄物か、産業廃棄物かの切り分けです。

産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法令で定められた20種類のものです。 使い終わったパソコンも、金属くずや廃プラスチック類が混ざったものとしてここに入ります。 危険性の高いものは特別管理産業廃棄物になります。

つまずくのは、会社から出たごみは全部が産業廃棄物だ、という思い込みです。 紙くずは決められた業種から出たものだけが該当します。 出どころだけでなく、種類も見ます

3. 渡した先を追う票、マニフェスト

図4 出した票の写しが戻ることで、処理されたと確かめられます

図4:出した票の写しが戻ることで、処理されたと確かめられます。

処理を人に頼むとき、必ず出てくるのがマニフェスト(産業廃棄物管理票)です。 押さえどころは誰が交付するか。 交付するのは廃棄物を出した側、つまり排出事業者です。 運搬業者でも処分業者でもありません。

票は渡して終わりではありません。 運搬が終わった、処分が終わった、最終処分まで終わったと、段階ごとに写しが戻ります

交付した票と戻った写しは5年間保存します。 期間内に戻らなければ、自分で調べて都道府県知事へ報告します。 電子マニフェストもあります。

4. 委託しても、責任は出した側に残る

図5 ものは離れても、適正に処理される責任はつながったままです

図5:ものは離れても、適正に処理される責任はつながったままです。

なぜ、そこまで票で追うのか。 廃棄物処理法が排出事業者責任を取っているからです。 事業活動に伴って生じた廃棄物は、出した事業者が自らの責任で適正に処理する

委託するなら、許可を持つ業者を選び、書面で契約し、マニフェストで最後まで確かめる。 この3点がそろって、適正な委託です。

守らないまま委託先が不法投棄をすると、支障の除去などの措置命令が出した側にも及ぶことがあります。 廃棄は買い物ではなく、預けものに近い。 値段だけで相手を選ばないことです。

5. 「リサイクル法」という1本の法律はない

図6 何を捨てるかで、見にいく法律が変わります

図6:何を捨てるかで、見にいく法律が変わります。

「リサイクル法」とひとまとめに書かれますが、その名前の法律が1本あるわけではありません。 容器包装、家電、食品、建設、自動車、小型家電。 対象ごとに別々の法律が立っています。

対象も、費用の負担も、回収の道すじも違います。 何を捨てるかが決まらないと、どれを見るかも決まりません

よく問われるのが家電リサイクル法の対象です。 エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目で、パソコンは入っていません。 パソコンや携帯電話は小型家電リサイクル法の側です。

6. パソコンは、どの道に乗るのか

図7 家庭から出たのか、会社から出たのかで道が分かれます

図7:家庭から出たのか、会社から出たのかで道が分かれます。

では、パソコンはどう手放すのか。 ここで資源有効利用促進法が出てきます。 3Rを進める法律で、パソコンはメーカーが回収して資源にする対象です。

家庭から出すなら、この仕組みでメーカーへ申し込みます。 PCリサイクルマークが付いていれば、料金は買ったときに払い済みで、追加なしで出せます。

会社から出すと道が変わります。 事業活動に伴うので産業廃棄物の扱いになり、許可を持つ業者へ委託してマニフェストで確かめます。 同じ1台でも、どこから出たかで道が変わります

7. 省エネ法は、みんなに同じ義務をかけない

図8 使う量が基準に達した事業者が、報告する側になります

図8:使う量が基準に達した事業者が、報告する側になります。

使う場面に移ります。 省エネ法は、エネルギーの使い方を報告させ、改善を促す法律です。 2023年4月施行の改正で、非化石エネルギーへの転換も対象になりました。

気をつけたいのは、すべての事業者に同じ義務がかかるわけではないことです。 事業者全体で使う量が、原油に換算して年間1,500kL以上になると、特定事業者として指定されます。

指定された事業者は、エネルギー管理の担当者を決め、中長期計画書定期報告書を出します。 届かない事業者にも努力義務はあります。 機器にも、トップランナー制度という基準があります。

8. データセンターは、電気の使い方で測られる

図9 施設全体の電力をIT機器の電力で割った値がPUEです

図9:施設全体の電力をIT機器の電力で割った値がPUEです。

省エネ法がIT側にいちばん近づくのが、データセンターです。 電気を大量に使うので、業種ごとに目安を置くベンチマーク制度の対象にも入っています。

よく使われるものさしがPUEです。 施設全体で使う電力を、IT機器が使う電力で割った値で、1に近いほどIT機器以外に回る電力が少ないことを表します。 図の例なら、IT機器1,000kWに施設全体1,500kWで、PUEは1.5です。

下げる工夫は、外気を使った冷却、機器の集約、空調の当て方。 そのまま設計の話です。 使われていないサーバを1台止めることも、りっぱな省エネです。

9. GX推進法とGX脱炭素電源法

図10 差し引きゼロを目ざす動きを、2本の法律が支えます

図10:差し引きゼロを目ざす動きを、2本の法律が支えます。

その先にあるのがカーボンニュートラルです。 出す量から、吸収したり取り除いたりする量を引いて差し引きゼロにする考え方で、日本は2050年の達成を目標に掲げています。 出す量そのものをゼロにする意味ではありません。

この移行をGXと呼びます。 GX推進法は、お金と仕組みの側です。 先に投資するための国債(GX経済移行債)、炭素に値段をつけるカーボンプライシング、実行を担うGX推進機構。

GX脱炭素電源法は、電気の作り方の側です。 再エネの導入を進め、原子力の運転期間の決まりを見直すため、電気事業法など複数の法律をまとめて改正しました。

10. 捨てる前に、データを消す

図11 機器が手を離れる前に、中身を読めなくしておきます

図11:機器が手を離れる前に、中身を読めなくしておきます。

廃棄の手続きを正しく踏んでも、それだけでは情報は守れません。 実際に、自治体で使われていたハードディスクが、廃棄を請けた側の従業員に持ち出され、売られた事件が起きています。

消し方は3つです。 記録の上に別のデータを書く上書き、はじめから暗号化して鍵を消す暗号化消去、穴を開けたり砕いたりする物理破壊。 SSDは書き込む場所が内部でずれるため、上書きだけでは残ることがあります。

外に頼むなら、消去の証明と廃棄の証明の両方を受け取ります。 捨てる手続きと、データを消す手続きは別物です。

確認問題

問1 事業者が産業廃棄物の処理を委託した場合について、適切なものはどれか。
ア 委託した時点で、処理の責任は委託先へ完全に移る
イ 委託しても責任は残り、マニフェストで最終処分まで確認する
ウ マニフェストは、収集運搬業者が作成して排出事業者へ交付する
エ マニフェストの写しは、処理が終わった時点で廃棄してよい

答え:イ
廃棄物処理法は排出事業者責任を取るので、アのように責任が丸ごと移ることはありません。 交付するのは出した側なのでウは主体が逆、写しは5年間保存するのでエも違います。

問2 家電リサイクル法の対象品目の組合せとして、適切なものはどれか。
ア パソコン、プリンタ、複写機、携帯電話
イ エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
ウ 自動車、自動二輪車、建設機械、農業機械
エ びん、缶、ペットボトル、紙製の容器

答え:イ
対象は4品目で、パソコンは入っていません。 アは小型家電、ウは自動車、エは容器包装のリサイクル法の側です。 対象ごとの個別法だと思い出せれば選べます。

問3 省エネ法の定期報告書について、適切なものはどれか。
ア 規模にかかわらず、事業を行う者は等しく提出する
イ 年間のエネルギー使用量が一定量以上で、特定事業者に指定された事業者が提出する
ウ 提出の対象は、製造業を営む事業者に限られる
エ 温室効果ガスの排出量が多い事業者だけが提出する

答え:イ
対象は、事業者全体の使用量が原油換算で年間1,500kL以上となり、特定事業者に指定された事業者です。 アは全員に同じ義務という読みで違い、ウのような業種の限定もありません。 エは温室効果ガスの制度と混ざっています。

まとめ

図12 取得・使用・廃棄のどの場面の話かで整理します

図12:取得・使用・廃棄のどの場面の話かで整理します。

環境関連法は、取得する・使う・捨てるの3つで仕分けると迷いません。 捨てる側の本体が廃棄物処理法。 会社から出たパソコンは産業廃棄物になり、許可業者へ委託してマニフェストで最終処分まで確かめます。

渡して終わりにならないのが排出事業者責任でした。 資源に戻す側は対象ごとの個別法で、家電リサイクル法の4品目にパソコンは入りません。

使う側は省エネ法。 定期報告などの義務は特定事業者にかかります。 その先の脱炭素をGX推進法GX脱炭素電源法が支えます。 そして、外へ出す前にデータを消す。

次回は「輸出関連法規」です。 ものや技術を国の外へ出すとき、何を確かめるのか。 外為法を中心に見ていきます。

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