基本情報技術者試験|その他の法律・ガイドライン・技術者倫理
情報公開法:誰でも、行政の文書を請求できる
前回は「文書の電子保存」で、e-文書法と電子帳簿保存法を見ました。 紙で持っていた記録を、どんな条件ならデータで残してよいのか、という話でしたね。
今回は情報公開法です。 同じ文書の話でも、向きが反対になります。 前回がどう残すかなら、今回はどう出すかです。

図1:誰でも請求でき、相手は国の行政機関などです。
正式には行政機関の保有する情報の公開に関する法律といいます。 長いので、ふだんは情報公開法と呼ばれます。
先に、いちばん外しやすいところを言っておきます。 この法律は、請求する側にほとんど条件をつけず、相手の側をきっちり決めています。 迷うのは、誰が請求できるかではなく、誰に対して請求できるか、のほうです。
まず結論:この章の用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 情報公開法 | 国の行政機関がもつ行政文書の開示を、誰でも請求できるとした法律 |
| 開示請求 | この文書を見せてほしい、と行政機関の長に求めること |
| 何人も | 国籍も住まいも利害関係も問わない、という条文の言い方 |
| 行政文書 | 職務上つくり(受け取り)、組織的に用い、いま保有している文書 |
| 法人文書 | 独立行政法人などがもつ、行政文書にあたるもの |
| 独立行政法人等情報公開法 | 独立行政法人などを相手にした、もう1本の法律 |
| 不開示情報 | 個人、法人の正当な利益、国の安全など、出さないと決められた情報 |
| 部分開示 | 不開示の部分を除いて、残りを開示すること |
| 審査請求 | 決定に納得できないとき、行政機関の長へ不服を申し立てること |
| 情報公開条例 | 地方公共団体が、それぞれ定めている情報公開の決まり |
この章のゴール
誰が、誰に対して、何を請求できるのかを、そのまま言えることです。
1. 見えないまま、任せきりにはできない

図2:預けた側が、使い道をあとから確かめられるようにします。
先に、なぜこんな仕組みがあるのかから入ります。
役所の仕事は、私たちが納めたお金と、預けた権限で動いています。 納めて、選んで、あとは任せる。 問題は、任せたあとです。 中で何が起きているかが見えないと、任せた側は確かめようがありません。
そこで、文書を出させる仕組みを法律で作りました。 第1条は国民主権の理念にのっとりで始まり、政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする、と続きます。
ここで1つ、覚えておくと得な話があります。 条文には「知る権利」という言葉は出てきません。 書かれているのは、開示を請求する権利と、説明する責務のほうです。
2. 「何人も」と書いてある

図3:国籍も利害関係も、請求の理由も問われません。
請求できるのは誰か。 条文の言い方は「何人も」です。 なんぴとも、と読みます。
これは思っているより広い言葉です。 日本国民に限られません。 外国に住んでいる人でも、会社などの法人でも請求できます。 その文書と利害関係があるかどうかも問われません。
そして、請求する理由を書く必要がありません。 理由を書かせると、その良し悪しで役所が相手を選べてしまうからです。 それでは権利とは呼べません。
書くのは、氏名や住所などと、どの文書がほしいのかが分かる事項です。 ここがあいまいだと、文書を特定できません。 なお手数料はかかります。 政令で額が決まっていて、無料ではありません。
3. 相手は、国の行政機関と独立行政法人など

図4:三権のうち行政が相手で、地方は条例、民間は相手ではありません。
ここが、いちばん取り違えやすいところです。
情報公開法が向き合う相手は、国の行政機関です。 省、庁、委員会、会計検査院など。 国の機関でも、国会と裁判所はこの法律の対象ではありません。 三権のうち、行政だけを相手にした法律だからです。
もう1つ、独立行政法人などがあります。 こちらは独立行政法人等情報公開法という別の法律が受け持ち、出てくるものの呼び名が法人文書に変わります。 「行政文書や法人文書」と2つ並ぶのは、根拠になる法律が2本あるからです。
そして民間企業です。 情報公開法は、民間企業に対して、その企業がもつ文書の開示を直接請求する制度ではありません。 ただし、会社が役所へ出した書類は行政文書になるので、その役所に対して請求されることはあります。
4. 何が「行政文書」なのか

図5:職務上つくり、組織で用い、いま保有しているものが行政文書です。
請求できるのは行政文書です。 役所にある紙、ではありません。 条件が3つあります。
1つ目、職務上つくったか、受け取ったか。 2つ目、組織的に用いるものか。 3つ目、その行政機関が、いま保有しているか。 この3つがそろって行政文書です。
効いてくるのは2つ目です。 職員が自分のためだけに書いたメモは、組織的に用いるものにあたりません。 逆に、共有フォルダで何人もが見ている資料は、名前がメモでも対象になりえます。 名前ではなく、どう使われているかで決まります。
紙にも限りません。 図面も、写真も、電磁的記録も入ります。 業務で回している電子メールも、組織的に用いていれば行政文書になりえます。
5. 請求してから、決まるまで

図6:原則30日以内に決め、延長にも上限があります。
請求すると、役所は開示するかどうかを決めて、請求した人に通知します。 これを開示決定等といいます。
期限があります。 原則は、請求があった日から30日以内です。 事務処理上の困難など正当な理由があるときは、さらに30日以内まで延ばせます。 延ばすときも、理由と見込みを知らせることになっています。
文書が著しく大量なときのために、期限の特例も別に置かれています。 それでも、待たせ続けることがそのまま拒否になる形にはしていません。
決定は3つのどれかです。 全部を開示する、一部を開示する、開示しない。 このあとの2つの節で、後ろの2つを見ます。
6. 出せない情報がある

図7:守るものがあるから、出せない部分が決められています。
なんでも出てくるわけではありません。 出さないと決められた情報を不開示情報といい、第5条に定めがあります。 中身は大きく6つです。
個人に関する情報と、法人などに関する情報。 法人のほうは、公にすると正当な利益を害するおそれがあるものです。 残りは国の安全、犯罪の予防や捜査といった公共の安全、審議や検討の途中のもの、事務や事業の適正な遂行に支障が出るものです。
並べてみると、どれも守る相手がいます。 都合が悪いから隠す、ではなく、出すと誰かが困るから出さない、という組み立てです。 会社が役所へ出した書類が守られるのも、2つ目によります。
ただし例外があります。 個人に関する情報でも、公務員の職務の遂行にかかわる部分は職名などが開示されます。 誰が担当したかは、私生活ではなく仕事の話だからです。
7. 全部か、ゼロか、ではない

図8:不開示の部分を除いて、残りを出すのが部分開示です。
不開示情報が1か所でも入っていたら、その文書は丸ごと出ない。 そう思ってしまいがちですが、違います。
不開示の部分を容易に区分して除けるときは、その部分を除いた残りを開示します。 これが部分開示です。 黒く塗られた書類がニュースに出てくるのは、この形です。
黒塗りは、意地悪でそうしているわけではありません。 5条のどれにあたるかで、塗る場所が決まります。 個人の名前だから塗る、他社の見積の単価だから塗る、というふうにです。 逆にいえば、理由を説明できない黒塗りは通りません。
もっとも、除いたあとに意味のある情報が残らないと認められるときは、開示しないこともあります。 全部を塗ったら白紙になる書類が、それにあたります。
8. 納得できないときの道すじ

図9:審査請求と訴訟の2つがあり、審査請求では第三者の機関に諮ります。
不開示だった、あるいは黒塗りが多すぎる。 納得できないときの道が、2つ用意されています。
1つは審査請求です。 行政機関の長へ、不服を申し立てます。 このとき、その役所が自分だけで結論を出すわけではありません。 原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮り、答申を受けてから裁決します。
もう1つは裁判所に訴える道で、決定の取消しを求めます。 審査請求をしてからでも、はじめから訴えてもかまいません。 順番は決められていません。
自分で決めたことを自分だけで見直しても、結論は変わりにくいものです。 だから外の目を入れます。 金融商品取引法で見た「評価する人と、評価される人を分ける」と同じ考え方です。
9. 地方には、地方の決まりがある

図10:国は法律、地方はそれぞれの条例。条例のほうが先にできました。
もう1つ、取り違えやすいところです。 情報公開法が相手にするのは国の行政機関で、地方公共団体は入っていません。
では市役所の文書は請求できないのか。 できます。 ただし、それぞれの自治体が定めた情報公開条例によります。 法律のほうにも、地方公共団体はこの法律の趣旨にのっとって施策を進めるように、という条文が置かれています。
おもしろいのは順番です。 条例のほうが、法律より先にできていました。 1980年代のはじめから自治体が条例を作りはじめ、国の情報公開法は1999年に制定、2001年に施行されました。
実務では、請求先を取り違えると手続きが始まりません。 国の出先機関なのか、県なのか、市なのか。 まず相手を確かめるのが先です。
10. つくる側から見た「記録を残す」

図11:記録が作られ、探せて、消えないことが、開示の手前にあります。
最後に、システムを作る側の話をします。 情報公開の話は、現場では記録をどう残すかの話になります。
理由は単純です。 出せるのは、残っている文書だけだからです。 作られなかった記録も、捨ててしまった記録も、出しようがありません。
だから設計では3つを見ます。 1つ目、あとから探せる形か。 請求が来てからサーバの中を探し回るようでは、期限に間に合いません。 2つ目、あとから書き換えられないか。 消せる記録、上書きできる記録は、残していないのと同じです。 3つ目、いつまで持ち、いつ捨てたか。 廃棄の記録がないと、無いことすら説明できません。
あなたが設計したログやメールの保管が、そのまま開示の対象になりえます。 公共のシステムを請けるとき、この前提を知っているかどうかで、要件定義の深さが変わります。
確認問題
問1 情報公開法に基づく開示請求の説明として、適切なものはどれか。
ア 請求できるのは、日本国籍をもつ人に限られる
イ 請求するには、その文書と利害関係があることを示す必要がある
ウ 何人も請求でき、請求の理由を明らかにする必要はない
エ 請求を受けた行政機関は、文書の全体を開示しなければならない
答え:ウ
条文の言い方が「何人も」でした。 だからアの国籍も、イの利害関係も問われません。 外国に住む人も、会社などの法人も請求できます。 エは第5条の不開示情報があるので違います。
問2 情報公開法および独立行政法人等情報公開法による開示請求の相手として、適切なものはどれか。
ア 国の行政機関や、独立行政法人など
イ 民間企業が社内で保管している文書
ウ 国会が保有している文書
エ 裁判所が保有している文書
答え:ア
相手は国の行政機関と、別の法律による独立行政法人などでした。 イは、民間企業に対して、その企業がもつ文書の開示を直接請求する制度ではないので違います。 ウとエは国の機関ですが行政ではないので、この法律の対象に入りません。
問3 不開示情報と部分開示の説明として、適切なものはどれか。
ア 不開示情報が1か所でも含まれていれば、その文書は全体が不開示になる
イ 不開示情報の部分を容易に区分して除けるときは、残りの部分を開示する
ウ 個人に関する情報は、どのようなものであっても開示されない
エ 不開示の決定に納得できない場合でも、争う手段は用意されていない
答え:イ
これが部分開示です。 全部かゼロか、ではありませんでした。 だからアは違います。 ウは、公務員の職務の遂行にかかわる部分のように開示されるものがあるので言い過ぎです。 エは審査請求と取消訴訟の2つがあるので違います。
まとめ

図12:誰が、誰に、何を請求できるのかで整理します。
情報公開法は、誰でも、国の行政機関に対して、行政文書の開示を請求できるとした法律です。 独立行政法人などについては、別の法律で法人文書を請求できます。
請求する側の条件はありません。 国籍も、住まいも、利害関係も、理由も問われません。 かわりに相手の側が決まっていて、民間企業に対して、その企業がもつ文書の開示を直接請求する制度ではありません。 地方公共団体は、それぞれの情報公開条例です。
出ないものもあります。 個人、法人の正当な利益、国の安全などの不開示情報です。 それでも全部かゼロかではなく、除けるなら残りを出す部分開示があります。 納得できなければ、審査請求か取消訴訟です。
実務に持ち帰ってほしいのは、記録のほうです。 探せて、書き換えられず、いつ捨てたかが分かる。 開示の話は、結局そこに落ちてきます。
次回は「ものと環境と輸出」です。 産業機器やPL法、環境関連法、輸出にかかわる決まりを、まず地図として並べます。


