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産業機器とPL法:動くものは、事故の前と後で見る
前回は「ものと環境と輸出」で、ものに触れる場面の法律を地図として並べました。 動かす、売ったあと、捨てる、外へ出す、という場面の違いでしたね。
今回はその1本目、産業機器関連法とPL法(製造物責任法)です。 どちらも動くものが人に危害を与えないようにするための決まりです。

図1:動くものと、その後ろにある法律の地図です。
出てくる機械は自動車、ドローン、産業用ロボットの3つ。 その下に横たわっているのがPL法です。
まず結論:この章の用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 道路運送車両法 | 自動車の作りや点検整備を決める法律 |
| 自動運行装置 | 運転者の認知・予測・判断・操作の能力の全部を代替する装置 |
| 走行環境条件 | その装置を使ってよい条件。国土交通大臣が付ける |
| 特定改造等 | 装置のプログラムを通信で書き換えること |
| 航空法 | 無人航空機の登録と飛ばし方を決める法律 |
| 無人航空機 | 人が乗れず、遠隔操作か自動操縦で飛ばせる機体 |
| 飛行禁止空域 | 無人航空機を原則飛ばせない4つの空域 |
| 小型無人機等飛行禁止法 | 重要施設とその周辺での飛行を禁じる法律 |
| 労働安全衛生法 | 働く人の安全を守る法律。産業用ロボットもここ |
| 製造物責任法(PL法) | 製造物の欠陥で生じた損害の賠償責任を定める法律 |
この章のゴール
機械の名前から法律を引けるようになり、PL法で何を示す必要があるかを、自分の言葉で説明できることです。
1. 事故の前と、事故のあと

図2:事故の前と、事故のあとで受け持つ法律が変わります。
機械は、設計され、作られ、出荷され、誰かに使われます。 産業機器関連法が効いているのは、この流れの前半です。 走ってよい形か、飛んでよい場所か、人が近づいてよい範囲か。 事故の前に、そこを決めています。
それでも事故は起きます。 そのときに誰が損害を負うのかを決めるのがPL法です。
気をつけたいのは、両者が独立していることです。 事前の決まりを守っていたからといって、あとの責任が消えるわけではありません。 問題文が「導入するとき」の話か「事故のあと」の話かを、まず見てください。
2. 自動運転する車は、まず「作り」から

図3:自動運行装置は、使ってよい条件つきで認められます。
自動運転の話は道路運送車両法から入ります。 この法律が見ているのは走らせ方ではなく、車の作りのほう。 保安基準に合う形か、点検や整備がされているかです。
2020年4月の改正で、自動運行装置が保安基準の対象装置に加わりました。 シラバスの本文は「自動運転装置」と書いていますが、法令上の呼び名は自動運行装置です。 中身はセンサー、電子計算機とプログラム、そして作動状態記録装置。 記録は法律側の要求です。
押さえたいのは、この装置が条件つきで認められていることです。 走行環境条件といって、国土交通大臣が装置ごとに「使ってよい条件」を付けます。 外れる場面では、運転者が引き取ることが前提です。
3. プログラムを書き換えるにも、許可が要る

図4:プログラムを配るところに、許可の関所があります。
ここは、ソフトウェアを書く側に近い話です。 自動運行装置のプログラムは無線で更新できますが、更新したとたんに保安基準に合わない状態になることがありえます。
そこで道路運送車両法は、この書き換えを特定改造等と呼び、プログラムを配る側があらかじめ国土交通大臣の許可を受けることにしました。 許可には、プログラムを適切に管理し、改変を確実に実行できる体制が要ります。
つまりリリースの手順そのものが法律の手続になっているということです。 なお車の「作り」は道路運送車両法、「走らせ方」は道路交通法が受け持ちます。
4. ドローンは、まず登録から

図5:重さ100gが、登録の要る・要らないの分かれ目です。
次はドローンです。 航空法でいう無人航空機とは、人が乗れず、遠隔操作か自動操縦で飛ばせる機体のこと。 ただし軽いものは外れ、境目はバッテリーを含めて100gです。
100g以上の機体は、飛ばす前に登録が要ります。 2022年6月からの義務です。 登録すると番号が割り当てられ、登録記号を機体に表示し、原則としてリモートIDで発信します。 飛んでいる間に持ち主が分かる仕組みがないと、落ちたあとで追えないからです。
なお、100g未満なら何をしてもよい、ではありません。 空港の周りや高いところでは、模型航空機にも別の決まりがあります。
5. 飛べない空と、承認の要る飛ばし方

図6:飛べない空と、承認の要る飛ばし方は別の軸です。
先に言います。 「どこを飛ぶか」と「どう飛ぶか」は別の軸です。 空域のほうが許可、飛ばし方のほうが承認と、言葉まで分かれています。
まず飛行禁止空域が4つ。 空港などの周辺、緊急用務空域、地表または水面から150m以上、人口集中地区(DID)の上空です。 ここは飛ばせないというより、国土交通大臣の許可を受ければ飛べると読んでください。 例外が緊急用務空域で、そのつど指定され、ほかの許可を持っていても飛ばせません。
もう一方が飛ばし方です。 夜間、目視の外、人や物件から30m未満、催し場所の上空、危険物の輸送、物件の投下。 この6つは、空域が問題なくても承認が要ります。
承認以前に守ることもあります。 酒気を帯びて飛ばさない、飛行前に確かめる、衝突を避ける。 承認を取れば何でもできる、ではないのです。
6. 場所そのものを禁じる、もう一つの法律

図7:重要施設のまわりは、重さに関係なく飛ばせません。
ドローンには、航空法とは別にもう一つ法律があります。 小型無人機等飛行禁止法です。 航空法が見ているのは飛行の安全ですが、こちらが守るのは重要施設そのものだからです。
対象は、国会議事堂や内閣総理大臣官邸、皇居など、危機管理行政機関の庁舎、政党事務所、外国公館など、防衛関係施設、対象空港、原子力事業所。 禁止されるのは敷地や区域と、その周囲おおむね1,000mの上空です。 2026年7月14日施行の改正で、300mから広がりました。
試験で効くのは、この法律の小型無人機に重さの下限がないことです。 航空法の無人航空機は100g以上でしたが、こちらは100g未満の機体も対象になります。
7. ロボットの規則が見ているのは、人のほう

図8:さくの外と中で、求められる備えが変わります。
3つ目は産業用ロボットです。 所管は労働安全衛生法、細かい決め方は労働安全衛生規則。 見ているのは機械ではなく、そばで働く人のほうだからです。 ふだんの運転中は、接触して危険が生じるおそれがあるならさくや囲いを設けるなどの措置をとります。
問題は教示のときです。 人が可動範囲の中に入るので、運転を止めるか、不意に動き出さないための措置と作業の規程を用意します。 教示や検査の作業には特別教育も必要です。
現場で聞かれるのが協働ロボットです。 ここは2つを分けてください。 定格出力80W以下のものは、規則でいう産業用ロボットから外れます。 一方、80Wを超えるものでも、リスクアセスメントで危険のおそれがないと評価できたなら、さくを設けなくてよい、という通達が出ています。
8. PL法が軽くしたのは、過失の証明だけ

図9:入れ替わったのは、いちばん上の1つだけです。
ここから、事故が起きたあとの話です。 製造物責任法、通称PL法。 この法律ができる前は民法の不法行為で争うしかなく、被害者の側が製造業者の過失を示す必要がありました。 工場の中は外からは見えないのに、です。
PL法は、この荷物を下ろしました。 過失を証明しなくてよいのです。 ただし、「欠陥を示せば足りる」ではありません。
示すのは3つ。 製造物に欠陥があったこと、損害が生じたこと、欠陥と損害の間に因果関係があることです。 欠陥とは、その製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。
責任を負うのは製造業者等。 製造・加工・輸入した者のほか、自らを製造業者として表示した者も入ります。
9. 製品そのものが壊れただけでは、足りない

図10:損害がその製品の外へ出たかどうかで分かれます。
見落とされやすい条件がもう一つあります。 損害が、その製造物の外へ出ているかです。 第3条にはただし書きがあり、損害がその製造物についてのみ生じたときは、この限りでないとされています。
つまり、欠陥のある製品そのものが壊れただけなら、原則としてPL法の出番ではありません。 買った機器が動かなくなっただけなら売買契約の話です。 その機器から火が出て人がけがをしたり、家財が焼けたりしたならPL法の対象です。
条文に合わせるなら、対象は生命・身体、またはその製造物以外の財産に生じた損害です。
10. ソフトウェアは製造物になるか

図11:ソフトウェア単体と、組み込まれた機器は別扱いです。
最後に、私たちにいちばん近い論点です。 PL法でいう製造物とは製造または加工された動産のこと。 ここから、ソフトウェアそのものは製造物にあたりません。
ただし、話はそこで終わりません。 そのソフトウェアを組み込んだ機器は、動産なので製造物です。 不具合で機器が通常有すべき安全性を欠いたなら、その機器に欠陥があるものとして責任を問えます。
作る側にも逃げ道はあります。 引き渡した時点の知見では欠陥が分からなかったときと、部品の欠陥がもっぱら組み込む側の設計の指示によるもので、部品を作った側に落ち度がないとき。 期限もあり、知った時から3年(生命・身体を侵害した場合は5年)、引き渡した時から10年で請求権は消えます。
確認問題
問1 PL法(製造物責任法)による損害賠償の説明として、適切なものはどれか。
ア 被害者は、製造業者の過失を証明しなければならない
イ 被害者は、欠陥と、その欠陥によって損害が生じたことを示す
ウ 欠陥のある製品自体が壊れただけの場合も対象になる
エ ソフトウェア単体も製造物として扱われる
答え:イ
PL法が外したのは過失の証明だけなので、アは向きが逆です。 ウは第3条のただし書きで、損害がその製造物についてのみ生じたときは外れます。 エは製造物が「製造または加工された動産」だからです。
問2 無人航空機(ドローン)の決まりとして、適切なものはどれか。
ア 重さ100g未満の機体も、航空法上の無人航空機として登録が要る
イ 人口集中地区の上空は、航空法上の飛行禁止空域にあたる
ウ 飛行禁止空域さえ避ければ、夜間飛行は承認なしに行える
エ 小型無人機等飛行禁止法は、航空法の中の規定である
答え:イ
飛行禁止空域は、空港などの周辺、緊急用務空域、150m以上、人口集中地区の上空の4つ。 アは登録の対象が100g以上です。 ウは空域と飛ばし方が別の軸で、夜間飛行には承認が要ります。 エは別の法律です。
問3 産業用ロボットの可動範囲内で教示等の作業を行う場合、適切なものはどれか。
ア 作業者への特別教育は求められていない
イ 労働安全衛生規則により、不意の作動による危険を防ぐ措置が要る
ウ この場面を定めているのは製造物責任法である
エ 構造が基準を満たしていれば、作業の手順は問われない
答え:イ
見ているのは機械ではなくそばで働く人でした。 アは教示や検査には特別教育が要るので違います。 ウは売ったあとの責任の法律で場面が違い、エは手順まで求められているので違います。
まとめ

図12:場面と法律を、対にして持ち帰ります。
この回は、動くものが人に危害を与えないようにする決まりでした。 事故の前が産業機器関連法、あとがPL法です。
機械と法律の対は3つ。 自動運行装置は道路運送車両法で、走行環境条件が付き、書き換えには許可が要ります。 ドローンは航空法で、100gから登録とリモートID。 場所を禁じる小型無人機等飛行禁止法は別で、重さの下限がありません。 産業用ロボットは労働安全衛生法です。
PL法で問われるのは、外れたものと残ったものの区別です。 過失は証明しなくてよい。 その代わり欠陥、損害、その間の因果関係は示します。 そして損害がその製造物の外へ出ていること。
次回は「環境関連法」です。 使い終わった機器をどう捨て、どう資源に戻すか。 売ったあとの、もう一つの出口を見ていきます。


